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朝日新聞 2011年8月17日

空襲の記憶 映画で記録

名古屋空襲を語る長谷川園子さんを撮影する森零さん=江南市

●名古屋の専門学校生ら 70人の証言収集
【「名古屋城焼失、家族で涙流した」】

 太平洋戦争の終盤、名古屋市中心部の半分以上を焼き、8千人近い犠牲者を出したとされる名古屋空襲の証言を、市内の自主映画グループが集めている。ドキュメンタリー映画にまとめて若い世代に伝えたいという。

 体験談を記録しているのは、名古屋市中区の専門学校「名古屋ビジュアルアーツ」の講師や学生らによるグループ「名古屋活動写真」。名古屋開府400年の昨年、からくり人形の山車のドキュメンタリーを制作し、江戸時代から伝わる多くの山車が空襲で焼失したことを知ったのがきっかけだった。
 2月から取材を始め、「戦争と平和の資料館ピースあいち」などの協力も得て、9月までに約70人の証言を録画する。その一人の元小学校教諭、長谷川園子さん(80)は当時女学校の3年生で、名古屋市西区に住んでいた。国宝の名古屋城が焼け落ちるのを目の当たりにし、家族で地面に座り、涙を流して城に手を合わせたという。「あんな苦しくて恐ろしい戦争を二度とさせないために、私たちは語り継ぐ義務がある。若い人たちが記録に残してくれると聞き、ぜひ会いたいと思った」と話す。
 「体験者はみんな高齢で、記録できる機会は今が最後かも知れない」と、監督の森零(もりぜろ)さん(46)はいう。家族や友人を目の前で失い、自身も深い傷を負うなど、悲惨な体験が多い。一方で、戦中と戦後の苦難をたくましく生き抜いた体験談に励まされたともいう。「東日本大震災という大災害があった今だからこそ、名古屋空襲体験者の声が若い人たちにも届くはずだ」と考える。年末までに完成させ、名古屋市内などで上映会を開く予定だ。(山吉健太郎)