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2010年 8月25日  読売新聞

  名古屋開府400年ドキュメンタリー 「山車まつり」撮影好調

映画監督森零さん「貴重な文化、100年先へ」


「山車まつり」の記録映画のため、からくり人形を修理する萬屋さんを撮影する森監督(左端)

 名古屋を舞台にした映画作りに取り組む監督の森(ぜろ)さん(45)

(名古屋市東区)が、名古屋開府400年を記念した秋の「大山車(おおだし)まつり」を中心にした記録映画作りに挑戦、すでに市内各地の山車や保存会の練習風景などを収録している。昨年は円頓寺商店街が登場する冒険活劇映画「歪屋(ひずみや)」を完成させたが、今回はガラリと違ったドキュメンタリーで、森さんは「山車やからくりは地域の貴重な文化。その魅力を100年先にも伝えたい」と話している。

(千田龍彦)

 江戸時代から名古屋では、各町内の山車と精巧なからくりが祭りを盛り上げてきた。100年前の名古屋開府300年の際には、18両の山車が参加して「山車奉曳(ほうえい)」が行われた。この時の山車は、太平洋戦争末期の空襲で多くを焼失したものの、1955年の名古屋まつりから、東、中、中村区の9両の山車が参加、伝統を引き継いでいる。

 開府400年を前にした2008年3月、各山車の保存会、奉賛会のメンバーで「名古屋曳絆(ひきずな)会」が結成され、今年10月16日、若宮八幡社から名古屋城まで、江戸時代のメーンストリート、本町通を北進する「大山車まつり」の開催を決めた。緑区の4両も参加する。

 この話を知った森さんが「名古屋の魅力を発信する好機。貴重な記録を後世にも伝えたい」と、記録映画作りのプロジェクト「名古屋活動写真」を発足させた。監督は森さん、スタッフは森さんが講師を務めている専門学校「名古屋ビジュアルアーツ」の同僚や学生、卒業生たちだ。

 今年1月1日の東区筒井町の神皇車のおはやし奉納の撮影から始まり、保存会の練習風景や、各地の祭りに登場した山車の様子を計5台のハイビジョンカメラで収録している。木偶(でく)師の2代目萬屋仁兵衛(よろずやにへい)さん(47)(愛知県春日井市)が、からくり人形を修復する場面なども押さえた。名古屋曳絆会の協力も得ている。

 取材や撮影を通じて、森さんは「後継者難に直面しながらも、山車を中心に世代を超えた交流がある。名古屋にとって大切な地域文化だ」と痛感したそうだ。

 大山車まつり後に編集に着手。DVD「開府400年と山車まつり」を2000枚制作し、市内の小中学校や教育施設には無料配布する。制作に200万円余かかるため、1口1万円の協賛金を募集している。問い合わせは名古屋活動写真事務局(052・581・1201、nagoya.kaifu400@gmail.com)。

 森監督の前作で、名古屋市西区の円頓寺商店街や四間道周辺を舞台にした冒険活劇映画「歪屋」は、伏見ミリオン座(名古屋市中区栄1丁目)で開催の名古屋シネマフェスティバル2010の上映作品にも選ばれている。上映は9月5日午前10時、7日午後2時20分、9日午前10時、10日正午の4回。当日券は一般・学生1500円、前売り1200円。