読売新聞 2012年3月16日
名古屋市を中心に活動する映画監督の森零(ぜろ)さん(47)らが制作してきたドキュメンタリー映画「名古屋空襲を語る〜今を生きる人へ」が完成し、大空襲があった19日に同市内で初の上映会が開かれる。74人に上る戦争体験者の証言を集めた森さんは「厳しい時代を生き抜いてきた人々の言葉には次世代の私たちが学ぶことがたくさんある」と話している。(米盛菜美)
同映画は、森さんや専門学校生らによるグループ「名古屋活動写真」が昨年春から制作を開始し、完成させた。太平洋戦争の開戦当時の映像から始まり、1944年末から終戦にかけて本格化した名古屋市や周辺都市への空襲ごとに証言が編集されている。
同じ空襲でも住んでいた場所や年齢によって、感じ方はさまざま。証言者たちは、それぞれの視点で記憶をたどる。70歳代の女性は「焼夷(しょうい)弾で目の前の女性が倒れた。背負っていた赤ちゃんを、父と一緒に助け出して必死で逃げた」と悲惨な光景を証言している。
証言者の大半は80〜90歳代と高齢であるため、撮影後に亡くなった人もいる。森さんは「今、お年寄りの体験を映像に残さないと、直接聞くことはできなくなる。力強く生きてきた人々の姿は、東日本大震災からの復興を目指す希望にもなる」と語る。
19日は、名古屋市中心部で約800人が犠牲となった大空襲から67年目にあたる。上映会は、同日午後6時から同市名東区よもぎ台2の「戦争と平和の資料館ピースあいち」で。同5時半からは空襲の犠牲者への追悼法要が行われる。入場無料。今後、学校や公共施設での上映も検討する。
問い合わせは、森さんが経営する同市西区那古野の雑貨店「零屋」(052・581・1201)。